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第九章・3

「遅いな」  もう、18時を過ぎている。  部活も生徒会もやっていない未悠は、遅くとも17時には帰ってくるはずなのに。 「途中で、買い物してるのかな」  健は、落ち着きなく室内をうろうろしていた。  ノートパソコンは、開いたまま。  追跡している事件についてまとめ始めてはいるが、今一つ筆が乗らないでいた。 「たまには私が、腕を振るうか」  フリッジを覗き込んで、食材を確認する。  買い置きがあまりない。 「出かけるかな」  ちょうど滞っていたところだ。  コートを羽織り、健は未悠に連絡をした。 「電話に出ない」  それだけで、嫌な予感がする。  未悠に、危機が迫っている。  そう考えるのは、トラブルメーカーを自認する健ならではの思考だった。 「いや、私の早とちりかも」  祈るような気持ちで、健はもう一度未悠に電話した。  11回目のコール音で諦めかけた時、反応があった。  未悠が、通話に出たのだ。 「もしもし、未悠!?」  急き込んで、健はスマホを握りしめていた。

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