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第九章・6

「さて、小咲くん。話してくれるかなぁ? 城嶋さんの秘密」 「僕、何にも知りません」 「優しくしてるうちに言った方が、君のためだよ」  未悠は、仁道会の事務所の一つに拉致されていた。  後ろ手に手錠を掛けられ、床に転がされていた。  屈辱的な状態だが、椅子に掛けた新見が何を言っても、頑として聞き入れなかった。 「新見さん。少し俺たちで可愛がってあげましょうか?」 「心が折れれば、吐くかもですよ?」  いやらしい顔つきの組員たちだったが、新見は首を横に振った。 「この子は人質だが、大事な商品でもあるんだ。手荒な真似は、できない」  しかし、と男どもは涎を垂らさんばかりの様子だ。 「このガキ、妙に色気がありやがる」 「誘ってますぜ、絶対」  ふむ、と新見は未悠の様子をうかがった。  確かに美しい少年だが、それだけではないようだ。  気丈な瞳の輝き。  この目を涙で濡らしてしまいたくなるのは、確かに解る。  そして。 「小咲くん。君、発情してるだろう」  周囲の男たちが、ざわめいた。 「やっぱ、オメガですか。こいつ」 「フェロモン駄々洩れ、ってやつかぁ?」  未悠は、初めて恐怖した。

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