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第十章・4

 スマホを持った手を思いきり踏みつけられ、組員は悲鳴を上げた。 「今、どこに連絡した? 言え!」 「う、あぁ! 痛い、痛い!」  人を痛めつけることには慣れているくせに、自分が痛い目に遭うことはほとんど無かった男だ。  健の脅しに、震え上がった。 「言わないと、もっと酷い目に……」 「言う! 言うから! この足をどけてくれ!」  組員はぺらぺらと、手持ちの情報を健に差し出した。 「じゃあ、そこに新見もいるんだな?」 「新見さんが、新しい商品を持ち込んだ、って聞いてる」  新しい商品。 (未悠のことか!)  商品なんかに、させてたまるか。  健は、スマホと一緒に男の骨を踏み砕くと、すぐに事務所を出て行った。  場所は、繁華街から少し離れたビル。  表向きは不動産業だが、一歩踏み込むとそこは極道の巣窟だ。 (未悠。どうか、どうか無事で!)  健は、全速力で駆けていた。

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