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第十章・5

「おそらく……、もうすぐ城嶋がここに来るだろう」 「城嶋?」 「それは何者です? 新見さん」  組員たちが慌てふためく中、新見だけがただ静かだった。 「今連絡を受けた、事務所荒らしの男。彼が城嶋だ」  何だって、と男たちは今度は興奮し始めた。 「ふざけやがって!」 「返り討ちにしてやるぜ!」  息まく組員たちは、白鞘の短刀や拳銃を手に武装し始めた。 「やめてください! 僕ならどうなってもいいから、健さんは!」  必死の未悠の願いを、男どもは鼻で笑った。 「すぐに可愛がってやっからよ」 「なに、すぐに終わるさ」  城嶋とやらをバラした後で、このオメガを犯す。  数名の組員たちは皆、そんな都合の良い未来を頭に描いていた。  ドアに集中して、照準を合わせたり、短刀を振ってみたり。  だが破られたのは、背後だった。  防弾ガラスで守られた窓が粉々に砕け、そこから健が乗り込んできたのだ。

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