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第十章・7
「未悠。大丈夫か!?」
「健さん、いけない。こっちに来ちゃだめだ!」
未悠は、新見が自分を人質にしないことを、怪しく思っていた。
きっと何か、策を考えて……。
は、と気づいた時は、新見の銃口がこちらを向いていた。
彼は、最終的には健が未悠の傍で動きを止めることを、予想していたのだ。
無防備で未悠の様子をうかがう健は、今の新見にとってはただの標的に過ぎない。
それにしても、と苦い顔はしていたが。
(まさか、これほどのパワーを持っていたとはな)
獣人について知らない新見ではない。
月は満月を過ぎ、欠けて来ているのだ。
暴れてもせいぜいプロレスラー並み、とたかをくくっていた。
それが、驚異の身体能力で組員たちを次々と倒している。
しかも、一方的にだ。
(至近距離で刺すのは、不可能。また、体術でひねるのも無理)
そうなると、後は銃に頼るしかなかった。
倒れた組員の手から拳銃を奪い、健に照準を合わせる。
ぱん、と乾いた音を立て、銃弾が発射された。
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