74 / 101

第十章・7

「未悠。大丈夫か!?」 「健さん、いけない。こっちに来ちゃだめだ!」  未悠は、新見が自分を人質にしないことを、怪しく思っていた。  きっと何か、策を考えて……。  は、と気づいた時は、新見の銃口がこちらを向いていた。  彼は、最終的には健が未悠の傍で動きを止めることを、予想していたのだ。  無防備で未悠の様子をうかがう健は、今の新見にとってはただの標的に過ぎない。  それにしても、と苦い顔はしていたが。 (まさか、これほどのパワーを持っていたとはな)  獣人について知らない新見ではない。  月は満月を過ぎ、欠けて来ているのだ。  暴れてもせいぜいプロレスラー並み、とたかをくくっていた。  それが、驚異の身体能力で組員たちを次々と倒している。  しかも、一方的にだ。 (至近距離で刺すのは、不可能。また、体術でひねるのも無理)  そうなると、後は銃に頼るしかなかった。  倒れた組員の手から拳銃を奪い、健に照準を合わせる。  ぱん、と乾いた音を立て、銃弾が発射された。

ともだちにシェアしよう!