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第十章・8

 健は、音で拳銃が使われたことを知った。  だが、その瞬間に未悠が被さってきた。  後ろ手に手錠をかけられたまま、押しのめすように健にぶつかって来た。 「未悠!」 「健さん……」  未悠は、腹に焼けつくような熱さを感じていた。  新見の撃った銃弾は、健をかばった未悠に当たったのだ。  彼のシャツが、みるみるうちに赤く染まっていく。 「未悠、しっかりするんだ。いいな!?」 「健さん、僕……」 「喋るな。今、何とかするから」  そこに、やけにのんびりとした声が上がった。 「参ったな。しくじったか」  新見だ。  彼は二度も健を仕留め損ね、苦笑いしていた。

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