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第十章・9
「新見、てめえ!」
怒り狂う健を、新見はなだめた。
「今は、その小咲くんを救うことが先決。そうだろう?」
「できるのなら、何とかしろ! でないと、お前を殺すぞ!」
「腕のいい、闇医者を知ってる。そこへ運ぼう」
「闇医者? 救急車を今すぐに」
「小咲くんが獣人だとバレれば、普通の病院だと厄介なことになる。そうだろう?」
健は、未悠を見た。
彼の体は無意識のうちに獣化し、弾丸の傷を癒そうと働いていた。
「……何でもいいから、早急に治療を」
「ビルの地下に、俺の車がある」
健は未悠を背負い、祈りながら新見の車に乗った。
「未悠は、俺をかばって」
「正直なところ、今の君は銃で撃たれても平気だったんじゃないのか?」
小咲くんは、無駄な献身をしたんだ。
そう、新見は眉をひそめていたが、健は首を横に振った。
「誰だって、銃で撃たれればただじゃ済まない」
たとえ獣人だって、痛いし、死ぬ。
死ぬ。
嫌だ。
未悠が死ぬのは、嫌だ!
「未悠、死なないでくれ。頼む。目を、あけてくれ」
健は未悠の手を取り、必死の思いで祈り続けていた。
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