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第十一章 祈り
新見の紹介した医師は、思ったよりずいぶん若かった。
「こんな若僧で、大丈夫なんだろうな?」
「腕は確かだ。保証する」
しかし、その医師・本多(ほんだ)は、未悠を見て顔をしかめた。
「獣人か。厄介だな」
「差別するな。未悠を死なせたら、お前も殺す!」
カッカするなよ、と本多は未悠の傷を見ながら、健に向けて手をひらひらさせた。
「あんた、この子の保護者か?」
「……そうだ」
「じゃあ、立ち会ってくれ」
急ぎ消毒をして術衣を身に着け、健は本多と共に手術室へ入った。
「麻酔を打つよ」
どこかやる気のない本多にイライラしながら、健は未悠を見守っていた。
すると、麻酔薬の入った注射針が、未悠の体の表面で曲がってしまったのだ。
「やっぱり」
「ど、どういうことだ?」
「この子は無意識的に、これ以上体を傷つけるものを拒否してるんだ」
未悠は、組員たちに麻薬を打たれそうになった時のように、表皮を硬化している。
これでは、患部を切開することも難しいだろう。
「そこで、あんたの出番だよ」
本多は、健に声を掛けた。
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