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第十一章・3
「未悠。手術が済んだら、家へ帰ろう。また、すき焼き食べよう」
「はい」
「ネギも、ちゃんと食べるから」
「ホント、ですか?」
かすかに、未悠が笑った。
健はその頬に、手を当てた。
「食後には、一緒にミルクティーを飲もう」
「……はい」
「ポップコーン食べながら、テレビ見て、笑って」
「……」
死ぬな、未悠。
死なないでくれ。
頼む。
私を独りぼっちにしないでくれ!
「いいぞ。針が入った」
本多の声は、やけに冷静だ。
「弾丸を、摘出する」
「頼む」
「声を、掛け続けて」
健は、何も考えないまま未悠に語り掛けた。
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