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第十一章・5

(寒い)  未悠は、シンプルにそう思っていた。  僕、どこにいるんだろう。  寒いところ。 (凍えそう)  寒いのは、苦手だ。  早く帰って、お風呂に入って。 (宿題やって、寝ちゃおう)  あれ?  こんな展開、いつかどこかで……?  するとそこに、細い路地が現れた。  何か、いる。  細い路地に、確かに何かいる。  そっと見てみると、そこにはうっすらと雪を被った男が倒れていた。 (あの、大丈夫ですか?)  どうしたのかな。  声が、出ない。   だが男は、返事を寄こしてきた。 「未悠、愛してる。愛してるよ」  その声に未悠の周囲は、ぱあっと晴れた。 「健さん!」  未悠を見つめる、優しいまなざし。  ああ、僕は。  この人の元へ還らなきゃ。  未悠は、健を力いっぱい抱きしめた。

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