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第十一章・6

「正直なところ、助かる確率は?」 「不明」  新見と本多は、オフィスでコーヒーを飲んでいた。 「常人だと、助かる確率は?」 「2割」  本多は、コーヒーに砂糖を追加しながら言った。 「だが、あの子は獣人だ。死の縁から、這い上がってくるかもしれない」 「できるかな」 「保護者次第だな。彼との絆が深ければ深いほど、チャンスはある」  だったら大丈夫だな、と新見はスマホを操作した。  そこには、マーケットで隠し撮りした二人の幸せそうな笑顔が。 「賭けるか?」  本多の声に、新見は小さく笑った。 「助かる方に、300万」 「じゃあ、私は助からない方に300万」  医師である本多が、それほど諦めているのか。  新見は、それでも笑みを納めなかった。 (小咲くんは、必ず還ってくる)  あの二人の絆は、そうそう簡単には断ち切れない。  彼は、そんな確信を持っていた。

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