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第十一章・7
ぴくり、と未悠の手がわずかに動いた。
気のせいか、と思った健だったが、指は彼の手を握り返してくる。
「未悠」
「……健さん」
「未悠。私は、ここだ。大丈夫だよ」
「痛い……」
「痛いのは、生きてる証拠だ。安心していい」
未悠のかすんだ視界に、やがて健の顔が見えて来た。
目が、赤い。
頬が、濡れている。
「健さん、泣いて……」
「泣いてなんか、いないさ」
そう言いながらも、涙がこぼれてくる。
嗚咽が、漏れてくる。
「還ってきてくれ、未悠。ここに。私の元に」
そうだ。
還らなきゃ。
健さんのところに。
ああ、でも……。
「体が、だるい」
「何だって」
「寒い」
再び瞼を閉じてしまう未悠に、健は焦った。
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