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第十一章・8

「寒い、だって?」  毛布を、掛けたほうがいいのか? 「いや、それよりも」  健は、服を脱いだ。  素裸になってしまうと、獣体に変化した。  完全獣化だ。  そして四つ足でベッドに上がると、未悠にぴったりと体を沿わせた。 (私の体温、全てくれてやる。だから、だから還ってくるんだ)  健にしがみつく未悠の四肢は、氷のように冷たい。  その体を、健は温めた。  喉で優しく唸りながら、温めた。 (健さんの声が、聞こえる)  未悠は、夢見心地で彼の声を聞いていた。  冬が和らいだら、梅を観に行こう。  素敵な梅園を知ってるんだ。  ドライブと洒落込もう  梅が咲いたら、次は桜だぞ。  桜の下で、お弁当広げて。  楽しいから。  絶対、楽しいから。  だから。  だから僕は、このまま逝ってしまうわけにはいかない。  未悠は、明るい光の方へ歩き始めた。  春の匂いのする方へ、向かった。  腕を伸ばし、温かい健の手を握った。

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