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第十二章・2
「未悠、痛くないか?」
「少し痺れてるだけです」
二人きりになると、健は未悠のそばに近寄った。
「彼氏、かぁ」
先ほどの、未悠の言葉を反芻する。
それは素敵な響きを持っていた。
「ごめんなさい。……迷惑じゃないですか?」
「迷惑だなんて。ホントのことだし」
未悠にふさわしい彼氏になれるよう、努力するよ。
健はそう言って、彼の手を取った。
「追っていた、人身売買の事件だけど」
「はい。どうなったんですか?」
「警察に、匿名で密告したよ。今、仁道会は大変なことになってると思うよ」
家宅捜索が入って、証拠がぼろぼろ出てきていることだろう。
「でもそうすると、健さんには報酬が全く入って来ませんね」
「いいさ。時には、こんなこともある」
行方不明になった子たちが、一人でも無事に発見されればいいんだけどね。
あとは、警察に任せよう。
健は、この事件からきれいに手を引いた。
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