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第十二章・3
事務所荒らしの犯人。つまり健の素性は不明、ということになっている。
「健さん、大丈夫なんですか? 捕まりませんか?」
「防犯カメラは壊しておいたし、今こうして闇医者の病院に隠れてるし」
多分、見つからないんじゃないかな。
そう、健は楽観的だ。
ただ……。
「ただ、組員の傷の程度から、常人の仕業じゃないことくらいはバレるだろうね」
獣人が、やった。
警察は、そう判断するだろう。
「獣人の評判を、また落としちゃうなぁ」
「人間社会では、生きづらいですね」
それでも健は、ヒトに寄り添って200年以上も生きて来た。
おかげで、未悠という大切な仲間にも出逢えた。
「この混沌とした世界に、感謝だよ」
「僕もです」
退院したら、伯父と会うつもりだ、と未悠は話す。
「進路について、きちんと決めようと思います」
「それはいい」
「その時、健さんもそばにいてくれますか?」
「私? いいけど?」
「彼氏ができた、って。紹介します」
健は、赤くなった。
それでも、照れながらうなずいた。
「伯父さん、許してくれるといいな」
そして、そっと未悠の額にキスをした。
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