87 / 101

第十二章・3

 事務所荒らしの犯人。つまり健の素性は不明、ということになっている。 「健さん、大丈夫なんですか? 捕まりませんか?」 「防犯カメラは壊しておいたし、今こうして闇医者の病院に隠れてるし」  多分、見つからないんじゃないかな。  そう、健は楽観的だ。  ただ……。 「ただ、組員の傷の程度から、常人の仕業じゃないことくらいはバレるだろうね」  獣人が、やった。  警察は、そう判断するだろう。 「獣人の評判を、また落としちゃうなぁ」 「人間社会では、生きづらいですね」  それでも健は、ヒトに寄り添って200年以上も生きて来た。  おかげで、未悠という大切な仲間にも出逢えた。 「この混沌とした世界に、感謝だよ」 「僕もです」  退院したら、伯父と会うつもりだ、と未悠は話す。 「進路について、きちんと決めようと思います」 「それはいい」 「その時、健さんもそばにいてくれますか?」 「私? いいけど?」 「彼氏ができた、って。紹介します」  健は、赤くなった。  それでも、照れながらうなずいた。 「伯父さん、許してくれるといいな」  そして、そっと未悠の額にキスをした。

ともだちにシェアしよう!