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第十二章・4

 未悠の入院中、一度だけ新見が病室を訪れた。  相変わらず、優しい微笑みをたたえて。 「無事で良かったよ、小咲くん」 「えっと。あの……」  何しに来た、と椅子を蹴って立ち上がったのは健だ。 「お前が撃ったんじゃないか!」  まあまあ、と新見は差し入れのケーキなど掲げて飄々としている。 「いろいろあったが、小咲くんには参ったよ。俺の負けだ」 「どういうことでしょう?」 「うん。それはね……」  新見は、未悠に出会ってからのことを振り返り、賞賛した。  仁道会の事務所で、組員に囲まれても毅然として振舞ったこと。  健が殴り込んで来た時、電燈を消した判断。  そして、愛する人をかばって銃弾を受けたこと。 「どれも、並の人間にはできない。君は素晴らしい」  そして、声をひそめた。 「俺と一緒に来ないか? 一流の殺し屋に育ててあげるよ」 「馬鹿言うな!」  健に一喝され、新見は笑った。 「ま、君はこの素敵な少年を、せいぜい泣かさないように。でないと」  でないと、本当に俺がさらいにくるよ。  新見は、未悠が気に入ったらしかった。

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