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第十二章・5
「お言葉はありがたいんですけど、僕は殺し屋にはなりませんし、健さんの傍を離れません」
「そうだろうね」
新見は手にしたケーキの箱をベッドサイドに置くと、健に対して話した。
「小咲くんの治療代や入院費は、気にしないでくれ。私が全額保証する」
「いいのか?」
「私が彼を、傷つけた。これくらいの後始末はしないとね」
仁道会から受け取った前金がある、と新見は話す。
「それを当てるから、大丈夫だ。もっとも、君を始末できれば、後の半分が手に入ったんだが」
「儲け損ねたな」
「まぁ、君のおかげで仁道会は滅茶苦茶だ。いまさら関わるつもりもない」
では、と新見はそれだけで背中を向けた。
「またいつか、美味しいチーズを教えてくれ。小咲くん」
「新見さん」
未悠の返事を待たずに、新見は病室から出て行く。
これ以上、未練を引きずることはできない。
新見もまた、未悠に惹かれていた。
病室の外で、独りごちる。
「また、会うことがあるんだろうか」
その時は、暗殺者として再び健の前に立ち塞がることに?
「その時は、その時さ」
にっ、と笑って、新見は医院から出て行った。
風は、少し春の匂いがした。
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