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第十三章 僕の彼氏はオオカミさん

 退院後、健は約束通り未悠と共に梅園を訪れた。 「満開だな」 「すごく、きれいです!」  広い梅園だが、散策にはちょうどいい。  香りも良く、未悠は梅に魅了された。  健は、梅について軽く勉強してきたらしく、いろいろと知識を披露してくれる。  感心したりうなずいたりしながら、一周廻ったころには日が暮れかけていた。 「日がかげると、さすがにまだ寒いな」 「でも今日は、風が南から吹いてました。温かかったです」  帰りますか? と首を傾げる未悠に、健は照れながら答えた。 「実は、この梅園の宿を一泊予約してるんだけど。……いいかな?」 「えっ」  外で、お泊り。 「嬉しいです!」 「ホント? 良かったぁ!」  見た目は古民家だが、内装は近代的にリフォームされている宿は、寒いことなどなかった。  そこで出された郷土料理に、未悠は喜んだ。 「おいしい。これ、僕にも作れるかなぁ」 「挑戦してみれば? レシピ、教えてくれるかもよ」  清水で造られた地酒に、健はいい気分だ。 「未悠も20歳になったら、一緒に飲もうな」 「あと2年かぁ」  笑い合いながらの、楽しい食事だった。

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