93 / 101

第十三章・2

 個室には半露天の温泉が湧いていて、未悠を驚かせた。 「すごい! お風呂に入りながら、景色が眺められますよ!?」  ライトアップされた、しだれ梅が見事だ。 「気に入ってくれた?」 「はい!」 「じゃあ、一緒に入ろうか」 「はい?」  外泊で一緒にお風呂に入るのは、初めてだ。  未悠は、わずかにためらった。 「大丈夫、大丈夫。絶対、何にもしないから!」 「ホントですね?」  しかし、二人で湯船に浸かったことを、未悠は喜ぶことになった。  健の大きな体にもたれて、すっかりリラックスだ。  美しい梅を眺めながら、静かに流れる時を味わった。 「ああ、このまま時が止まってしまえばいいのに」 「私はイヤだな」 「どうしてですか?」  本当は、この後に控えているお楽しみを考えていた健だ。  だが、それをそのまま口にするような迂闊さは見せなかった。 「未悠と、もっともっといろんな体験をしたいからさ」 「ありがとう、健さん」  健の太い二の腕に、未悠は両手でしっかりと抱きついた。

ともだちにシェアしよう!