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第十三章・2
個室には半露天の温泉が湧いていて、未悠を驚かせた。
「すごい! お風呂に入りながら、景色が眺められますよ!?」
ライトアップされた、しだれ梅が見事だ。
「気に入ってくれた?」
「はい!」
「じゃあ、一緒に入ろうか」
「はい?」
外泊で一緒にお風呂に入るのは、初めてだ。
未悠は、わずかにためらった。
「大丈夫、大丈夫。絶対、何にもしないから!」
「ホントですね?」
しかし、二人で湯船に浸かったことを、未悠は喜ぶことになった。
健の大きな体にもたれて、すっかりリラックスだ。
美しい梅を眺めながら、静かに流れる時を味わった。
「ああ、このまま時が止まってしまえばいいのに」
「私はイヤだな」
「どうしてですか?」
本当は、この後に控えているお楽しみを考えていた健だ。
だが、それをそのまま口にするような迂闊さは見せなかった。
「未悠と、もっともっといろんな体験をしたいからさ」
「ありがとう、健さん」
健の太い二の腕に、未悠は両手でしっかりと抱きついた。
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