96 / 101

第十三章・5

「ね、健さん……」 「何だい?」  愛を交わし、ウトウトと寝入りながら未悠はささやいていた。 「僕、そのうち……」 「ぅん?」 「いえ。やっぱり何でもないです」  何だよ、と健は未悠を抱き寄せた。  話しかけておきながらお預け、なんてずるいぞ。  すると未悠は、健の体に顔を押し付け、小さな声で。  本当に、小さな声で言った。 「僕、そのうち。健さんの赤ちゃんが、欲しい……」  健は、その言葉をしっかりと聞き取っていた。  でも、もう一度聞きたい。 「聞こえないな。もう一回」 「僕、健さんの。赤ちゃん、欲しい」  この魔法の言葉、何度だって聞きたい! 「未悠。もう一回、言って」 「もう。聞こえてるくせに!」  未悠、と健はその身を抱きしめ、頬ずりした。  鼻を、顎を擦り付け、マーキングした。 「ホントに、私の赤ちゃん産んでくれる?」 「……はい」  人生最良の日だ!  

ともだちにシェアしよう!