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第十三章・6
健は、少し目を覚ました未悠に語り掛けた。
「参ったな。先を越されちゃったよ」
「何がですか?」
「プロポーズ」
そんな、と未悠は健にすがった。
「僕、プロポーズなんかしてません」
「赤ちゃん産んであげる、ってのは、最高のプロポーズだよ」
それとも、といたずらっぽい響きの、健の声だ。
「赤ちゃんは産んでくれるのに、結婚はしてくれないの?」
「もう。健さん、ったら」
それなら、と未悠は唇を尖らせる。
「僕、もうプロポーズしましたから。今度は、健さんがしてください」
「ええっ?」
これは困った。
200年以上生きてきたが、誰かにプロポーズしたことは一度もないのだ。
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