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第十三章・8

 バタバタと、未悠は玄関に駆けた。 「ああ、遅刻しちゃう!」 「未悠、お弁当は!?」  手作りの弁当を手に、健が追って来た。 「健さんの分のお弁当は、キッチンに置いてますからね」 「うん、ありがとう」 「ネギも、ちゃんと食べてくださいね?」 「は~い」  じゃあ、行ってきます、と未悠は元気にマンションを出て行った。  春を迎え、高校を卒業した未悠は、調理師専門学校へ進学した。   『僕、健さん専属のシェフになりたいんです』  こんな嬉しいことを、言ってくれた。  学べば欲が出て、もっと学びたい、などと言い出すかもしれない、と健は考えている。 「海外留学でも何でも、ついて行くからな!」  それにはまず、資金を稼がなければならない。  未悠の伯父は彼が進学することを喜んでくれたが、いつまでも頼りきりというわけにもいかないだろう。  健は大きく伸びをすると、デスクに向かった。

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