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第6話
警察が来るまでの間、優が呼んだらしい助っ人が何人か来て、それぞれ武器らしいモノを持って男を取り囲んでいた。
多勢に無勢、抵抗することを諦めた男はガックリと肩を落として大人しく座っていて、駆けつけた警察に連れて行かれた。
出先だった姉ちゃんにも連絡が行き・・・・・・
事情聴取は改めて警察署の方で伺いますからって言われて・・・・・後日、姉ちゃんが付き添って出向くことになった。
「大丈夫?」
綺麗にセットして出掛けて行ったのに、今は髪をバサバサ振り乱して、俺達に駆け寄ってきた。
そんな姉ちゃんの後ろには、俺も何度か会ったことがある姉ちゃんの親友さんが立っていて・・・・・・
なぜか優の頭を抱えてグリグリと撫で繰り回してる。
あれ?そう言えば姉ちゃんの親友って確か・・・・・・
「よくやったわ!」
そうだ、優の従姉妹だ。
「鳥居の前で娘達と一緒にこの世の終わりみたいな顔して立ち尽くしていた時は何事かと思ったけど」
鳥居?娘達?この世の終わり?
駆けつけてくれた人達の中に、赤い金魚の浴衣を着た女の子を抱いた子もいて・・・・・・
「あんたが自分の娘を押し付けて来たからヤヤコシイことになったんだぞ!」
女の子を抱いた子にじゃなく、姉ちゃんの親友さんを指差して・・・・・・ややこしい?
「あたし達、考えてること同じだったわけよ」
ぽんぽんっと俺の頭を撫でて抱き寄せ、姉ちゃんが事情説明を始めた。
夏祭り、久しぶりに会ってはしゃぎましょ、と計画した二人は、お互いの旦那は放置するとして、子供をどうするかと頭を悩ませ・・・・・・
自分達の買い物に連れ回すのも可哀想だから・・・・・・・・
ねぇ、とお互いの思惑を察し、凌空は俺が面倒を見る羽目になり、親友さんの子供はその妹さんが・・・・・・
従姉妹さん達は、夏祭りってことで、実家である優んちに来てて・・・・・・
なかなか一筋縄ではいかない、おしゃまさんな姪っ子の面倒を優にも見るようにってことになったらしく?
つまり、さっき俺が神社で会った、俺が優の彼女だって思ったのは、優の従姉妹で・・・・・姉ちゃんの親友の妹さんだったわけで。
優とその彼女の子供だって思った子は、この親友さんの子供、つまり、優の姪っ子で・・・・・・・・
「・・・・・・脅迫されたんだよ。夏祭りの日に姪っ子の面倒見なければ、格好悪い写真や格好悪いエピソード盛りだくさんで、拓海を地下に引きずり込むって。そこで、あれやこれやと、あることないこと言いふらしてやるぞって」
地下に引きずり込まれるのか?
って言うか、優の格好悪いエピソード・・・・・・・きっ、聞きたいかも。
「ちゃんと冷やさないと・・・・腫れるぞ、コレ」
殴られた頬に優の指先が触れて、ピリッと痛みが走った。
「大丈夫」
大丈夫だ、こんなの痛くない。
痛くないないのに、止まってたはずの涙がまた溢れて来て、優に見せないようにゴシゴシと浴衣の袖口で拭った。
「あ、コラ、擦るな」
両手首を掴まれたら隠せないだろうが!
「ゴメン・・・・・誤解させた」
手、離してくれよ。
涙が止まらないだろ?
それに、俺が勝手に誤解したんだ・・・・・・自業自得だよ。
俺、離れなくていいんだよな?
お前の事忘れなくていいんだよな?
「俺、本当に、お前と一緒に夏祭り行きたかったんだ」
だって、俺達、付き合い始めて初めてのデートイベントだったんだから。
「今からでも遅くないだろ?」
止めどなく流れる俺の涙を・・・・・・ちゅっと、吸い取ってくれて。
見詰め合って数秒。
「コホン!」
姉ちゃんの咳払いで我に返る。
そうだ、俺達以外にも人がいたんだった。
「家の事は姉ちゃん達がやっておくから、あんた達は祭りに行ってきな?」
え?今姉ちゃんが神様に見えた。
「はい、ありがとうございます!拓海、行こう!」
「え?あ、うん!」
「ちゃんと頬も冷やしなさいよ」
優に引っ張られて家を飛び出した俺の背中に向かって姉ちゃんの声が投げられたけど・・・・・・
俺達は振り返ることもなく・・・・・・
初めてのデートイベント、夏祭りへと向かったのだった。
FIN
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