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番外編 ありがとう、おめでとう、よろしくね その11 Xmas

☆副題『和哉、黒歴史をついに告白の巻』  胸の飾りを舌で捏ねるように舐られたら、中心がいとも簡単にふるっと立ち上がる。 「ああ……」  肌を合わせる時にこんなところ舐めても……。とはじめは思っていたのに、熱い舌先で触れられると女の子みたいにひっきりなしに声を漏らしてしまうのだ。  男だから仕方ない。  男なのにしょうがない。  今舌先でぐりぐりと刺激を受けている場所と、まるで関係のない部分なのに、和哉に渡された小さな下着を押し上げ苦しいほどに勃ちあがるソレと、お腹の奥の切ない疼き。  どちらも併せ持つ自分の感じやすい身体が柚希は恥ずかしくてたまらない。 「んん。ハァ……」    唇を噛みしめて声を飲み込もうとしても、じゅ、じゅっと音を立てて吸いつかれるとたまらず零れてしまう。  気持ちが向いている時は一身に胸に顔を埋めてくる和哉が幼子の様で可愛いとすら思うことすらあって、髪を撫ぜたり耳を悪戯したりと返す余裕すらあったが、今はただ腕を柔らかな……。多分フェイスタオルで戒められてしつこく与えられる愛撫に身を委ねきれずに時折震えるだけだった。  和哉が顔を僅かに離して漏らす熱い吐息にすら胸の先がじんっと刺激されて、どうにかなってしまいそうだ。 「……兄さんは最初からどこもかしこも感じやすかったよね。眠っている時にね? キスしたり、肌に触れただけでも腰をいじいじ動かして……。可愛かったなあ。気持ちよさそうな声を出してさ」 「な……なにいって?」  やっと柚希が反応を見せ応じたので、和哉を貪っていたからだから身を起こした。  柚希が瞳を潤ませ和哉を怯えを交えた顔で見上げてきたから、和哉はうっそりと一度微笑んだ。 「気づいてなかったの? 僕、高校生の頃……。まだΩになる前の兄さんの部屋に忍び込んで……。ちょっとエッチなことしてたんだよ?」 「え……。うそっ?」  ちょっと考えてもそんなこと覚えがなかったが、和哉がわざわざ嘘をつくはずもない。 「こんなふうにね?」  上を向いた拍子に半ば開いていた無防備な唇に長く分厚い舌を差し入れられて、縮こまった舌を絡められる。その間にも裸の胸を掌でまさぐられて、これがその夜の再現だとしたら、かなり淫靡なやり取りを高校生の弟に施されていたことになる。まだあどけなさが残っていたあの頃の和哉の顔を思い浮かべたら、顔がたちどころに真っ赤に火照ってしまう。 (カズが高校生の頃って……。二年の冬まで俺はまだΩじゃなかったはずだよな? 一緒に暮らしてた頃……?)  多分その頃よりはずっと執拗な口づけはわざと柚希の呼吸を奪うようにぴったりと唇を塞がれて苦しくて胸を叩こうにも頭上で戒められた腕を外すこともできずに本能的に追い詰められる怖ろしさで……。余計に感じてしまう。  漸く雫を互いの唇の間に伝わせながら離れ、空気を貪り乱れた吐息を柚希が整える。和哉は赤く色づく胸飾りがオレンジ色に近い照明に照らされてぬらぬらと光る様や、黒い小さな下着を押し上げて屹立する柚希自身、大きく開かれた光沢があるほどに真っ白で艶めかしい太腿を、捕らえた獲物を満足げに見下ろす獣に似た雄っぽい野性的な表情で見下ろしてくる。 「どうして……」    図らずも同じ言葉できき返してしまうのは長らく共に育った兄弟ならではなのかもしれない。 「どうしてって? そんなの兄さんが好きだから……。好きで好きでたまらなかったから、ずっとずっと僕のものにしたかったからだよ。兄さんが僕のΩになればいいって願いながら、ずっとこんなふうにキスしてた。αがΩの因子を持つ未分化の人に口づけをし続ければ、Ωにできると思ってたから」 「え?」 「だから兄さんは、僕がΩにした。僕のΩなんだよ?」  以前もあった。和哉が柚希に向かい『僕のΩ』と口にしていたのは、比喩か何かだと思っていたのだが実は真にそう思っていたと分かった。 「……なんだよ、それ」 「なのに兄さんは……。晶先輩に揺らめいたり、今もβだった頃のこと懐かしんで……。僕の世界は兄さんが中心に成り立ってるのに……。兄さんの世界は僕だけじゃ不満? こんなに……愛してるのに」  和哉が布団とベッドの脇から取り出したのは、蛍光オレンジが禍々しい大き目のボトルだった。急なことにあれはなんだと目を見張る柚希と目を細めた和哉は口元を歪め可笑し気に意味深に微笑みながら中身蓋を開けると、中の液体をわざと見せつけるように両掌にぬちゃりと塗り付けた。  そのまま液体をパンケーキにメープルシロップを惜しみなくかけるような気軽な仕草で、和哉はとろり、と柚希の胸元にかけてきた。  冷たさと何故か続く温かさ。敏感に膨れた乳首から身体を伝って布団にまでゆっくりと伝い零れていく。何とも言えない感覚に柚希は身悶えていやいやをする。 「かず、こわい!! なんか変、やめて」 「晶先輩はこういうの使わなかった?」 「和哉、お前! ああっ!」  敏感になった胸元を両手を広げて掌で丸く捏ねられ、ぬるつく刺激で余計に立ちあがって身悶える兄を和哉は親指の先で乳輪と、たまに掠めるように乳首を刺激して追い詰めてきた。滑らかな動きで掌全体を使い、しつこくしつこく弾かれると、すすり泣きたくなるほどの悦楽に腰から上の身体が無意識に布団の中にぐりぐりと掘り進むように身悶える。  先ほどの刺激よりもさらに増した快感に柚希は堪らず、は、はっと喉だけで息をしながら小さなショーツの下に邪魔され思うとおりに開放されない陰茎がズキズキと痛んで仕方がない。 「……たまにはいいでしょ? こういうのも」 「やああ」 「やあ、じゃなくて。気持ちいいでしょ? こっちはどう?」  同じく、ローションをあの、紐パンの上からかけられ、両方の紐をほどかれてぶるっときつさから解放された。 「……」  思わず『かずや、触って、沢山擦って』と身もふたもなく叫びだしたくなる。だが嫉妬にかられた和哉に意地悪をされていると分かっているし、これはある種のお仕置なのだろうと感じて兄としての意固地さが手伝い、意地でもそんなことを口にできない。  満足が行くまで身体を与えても良いとは思ったが、柚希の方から歩み寄る気持ちにはなれなかった。  そんな柚希の気持ちを知ってか知らずか。和哉の形良い指先がつつっと柚希の裏筋を撫ぜていく。腰を跳ね上げて、だがまだイケない。 (イキたい、イキたい……) 「兄さん、出したそうだね? 先っちょも、もう、とろとろ、気に入った?」  腰を動かし、すぐさま和哉の指先に自分自身を夢中で擦り付けてしまって、それを揶揄われてしまった。  柚希にとって檻のように自由を奪う、甘い甘い和哉の香りは金木犀に似ていて……。  いつだって柚希の理性を奪う芳醇なそれに包まれると訳が分からなくなってしまうそうだ。    懸命に擦り付けていたのに、和哉に手を離されてしまった。それでも腰が止まらず、空しく腰を動かしてしまう。はちきれんばかりに勃起しているのに、放てないもどかしさに気が狂いそうだ。  しかし足元が見えない柚希をいいことに、和哉はさらなる責め苦に打って出てきた。    ローションを浸した黒い淫靡な下着。  それを亀頭の先におもむろに充てられて柚希は声を上げて『ひああ』とあらぬ声を上げた。 「ねえ、兄さん? 晶先輩とはどこまでしてたの?」  和哉がにたり、と笑い乍ら、いたぶる様に手を動かし始める。  滑らかに動く薄い化学繊維の下着を亀頭に押し付けながらくるくるとその先だけを責め立てる。 「ひぃ、ああ、ああああ……」  突然目も眩むような、しかし信じられないほど狂おしい快感に苛まれて柚希はもはや声を止められなくなってしまった。 (なにこれ……、なにこれ??!)  ずっとずっと、気持ちいい。  イキたくて堪らないのに、イケない。その上射精感というよりも尿意に近い感覚がせり上がってきて、爆発しかけて腰が動く。そんな変化を和哉は目ざとくみつけて、意地わるくぴたりと手を止める。  兄が潤み切った瞳をただ自分にだけ向けてくるのが和哉は愉快でたまらない。 「か、ずぅ」 「この飾りには晶先輩も触ったよね? 沢山可愛がってもらった? 学生の頃より、ぷっくりしていていやらしいもの」  すすり泣きに近い声を上げると、和哉が意地悪く柚希の胸の先をぴんと指先で弾く。 (それは、お前がしつこくしゃぶるからああ!)  その刺激で恥ずかしくも達しかけて足を閉じようともがくが、太腿に和哉の爪が食い込むほどさらに広げられて敏感な鼠径部をそよぐ様に触られて、柚希はまたもがく。  再び今度は指先だけで敏感になりすぎて辛いさきっぽをぬちぬちと輪を描くように弄られ、ついでにきゅっとすでに赤く熟れた乳首の先を摘まみ上げられた。 「ひいっ それ! もお、いやあ!!」 「先輩とこんなふうに触りっこはした? 柚希はすぐ可愛い声で喘ぐから、こっちは、ずっと、たまんない気持ちになるよ。ああ……。柚希の中に入りたい。こんなに濡れてΩの香りが駄々洩れの柚希と……。最後までしてないなんて……。ほんと、疑わしいなあ。こんなに感じやすくて可愛い柚希を前に、理性が持つと思えないよ。僕なら閉じ込めてどこにも出したくない。誰にも触れさせたくない。奪わせない」    甘く柔らかな口づけと、一方的に触れられるだけの穏やかなやり取り。  晶との間にこんなに激しく狂おしい思いをしたことはなく、気が変になりそうだ。 「……あき、こんなこと……しない」    柚希から居場所を奪わぬために我慢をし続けて、奪うように番にせずに結果手放した優しい晶。  止まぬ責め苦に朦朧としたまま無意識に口走った言葉の意味の重たさを受け、瞳をぎらつかせた和哉には気がつかずに柚希は顔を桃色に染め、瞑目し、零れる悲鳴に似た嬌声を漏らして半ば唇を開いたまま、真っ白な身体に珠のような汗を浮かべて身悶える。  和哉の荒い息が興奮を伝えてくるが、再び始まる痛いより辛い快感に苛まれ、柚希は自由にならぬ指先で宙を掻きむしりながら胸を突き上げて泣き出した。 「う…、ひ……。ううっ、で、でちゃう」 「でちゃうの? どっちがでちゃうのかな?」  顔を真っ赤に染めて、もはや涙をぽろぽろと零す柚希の涙をぺろりと舐めとり、和哉はさらに水音を激しくたてながら布を動かした。   「お、……でちゃおう」 「漏らしそうなの? 大丈夫だよ。ぐちゃぐちゃに汚しても僕が綺麗にしてあげるから」 「はずかしいぃ、やだ、やだあ、かず! ゆるさない」 「だせよ、僕に全部、見せろ」     ☆下の方に推敲してた原稿載せたままでした。大変失礼しました。      

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