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番外編 ありがとう、おめでとう、よろしくね その12 Xmas
☆ちゃんといつも通りいちゃついている、痴話げんかですので安心してご覧ください。
柚希が啼きながら懇願したというのに和哉は止める素振りも見せない。それどころが規則的に攻め立てる手をさらに速めて追い込んできた。
布の擦れる強烈な感覚にいやらしい水音、荒く狂おしい和哉の吐息。
それらすべて柚希も煽られ、蜜壺が緩み潤み、そして蕩けて伝う感覚に身悶えた。
「ひぃっ」
和哉自身興奮しきっていて、今すぐに柚希の身体を奪いたくてしょうがないのだろう。その激情をなんとか逃そうと、身体をかがめて柚希の急所ともいえる頸の近くを舐め、甘噛みを繰り返してくるがそれが互いにもうどうしようもない程感じてしまい余計に頭に血が登ってきた。
「兄さん……。柚希!!!」
暗闇の中その一点にだけ目印の如く火が灯ったように、柚希の頭の中には陰茎の先のそこだけしか頭に浮かばない。感覚せり上がる感覚はもはや爆発寸前にまで高まり、腰が自然に動くことをやめられない。
「無理!!! も、だめ!」
柚希は自分でも止められぬまま腰を突き立て、全身にがくがくと震えを伝わせながら、ついには何ともつかぬ熱い液体を愛する弟の目の前で迸らせてしまった。
「も、漏らした……」
和哉は今だ痙攣が止まらぬ止まらぬ薄い腰の上に流れた、サラサラとした液体を指に掬い上げて、それをわざわざ柚希の目前に晒して指先をぺろっと舐めとった。
「なっ! なにして!!」
「……潮、沢山だせたね? 上手だったよ? 気持ちよかった?」
弟の普段よりもさらに色気のました美しい微笑みと、あまりに淫靡な仕草に、震えが止まらない。
「さいてい、かずの、馬鹿、きらい」
涙声で、というより殆ど泣きぬれながら和哉を詰る。流石に弟の悪ノリか……もしくは憂さを晴らすような行為に怒りが込み上げてきて、ついそんな悪態をついてしまう。
和哉は兄の媚態や必死の嬌声に煽られ荒い息を吐いたまま、準備よく寝室に置かれていたタオルで身体を拭ってくれた。
そのまま和哉は柚希の手首を戒めていたタオルを手早く外して、片手を柚希の冷たくなった指先に指を絡めて握ると、背中に手を回して柚希の上半身を抱き起し、ぎゅっと抱きしめて顔中に口づけてきた。
「ごめん……。でも僕は柚希が大好き……。愛してる。こうして訳わかんなくなるぐらい、柚希のことが好きだ」
くったりとした柚希を見て頭が冷えたのか、先ほどまでの剣幕は鳴りを潜めて殊勝な声で呟きながら触れるだけの穏やかで優しい口付けを繰り返してくる。
すぐに絆される柚希は伸ばしたまま縛られて強張ったもう片方の指先を伸ばすと和哉の首に絡めて舌を差し出した。
「んっ……」
敏感なままの身体がまだ時折自分の意志に反してびくっと動く。和哉は口づけを深めながら、自分の下着に手をかける。
先ほどからもう、風呂上りにボクサーパンツだけを身に着けていた逞しい下半身ははちきれんばかりに高まり、柚希のあの石鹸のような甘く爽やかなフェロモンに反応して腹につくほどそそり立っていた。
その欲望を身体に押し付けられ、柚希はその熱と硬さにお腹の奥がじんっと濡れる。
「柚希の中、入っていい?」
愛する男が甘く低い声でそう許しを乞いながら、柚希の戒められていた手首に詫びるように口づけた。
さっきまであんなに無茶苦茶なことをしてきたくせに、こんなふうにお伺いを立てて欲望で掠れた声で囁かれ懇願される。
先だけをしつこく攻められた身体は陰茎で上手にイくことはできておらず、柚希の欲望も天井まで高まってもはや苦しい程だ。
「……いいよ。ばかワンコ。……あとで、あ、ひぃああ!ああ!!」
『あとでちゃんと話を』と何とか伝えようと思ったのに、性急に腰を進めた和哉が、辛抱できずに柚希の中に押し入ってきたのだ。
その衝撃で限界を越えて敏感になっていた柚希の身体は成すすべもなく今度は前を放って、気をやりそうな快感を逃そうと震わせる身体をがしっと背中に手を回して一度強く抱きしめられた。
「柚希……。どこにもいかないで。ずっと傍にいて。僕の柚希!!」
アパートで母と暮らしていた頃。どうしても夕飯の支度で足りないものがでて遊びに来ていた和哉がソファーで転寝をしていたから、起こすのも可哀想だと思い、寝かしたまま買い物に出ようとした。すると物音で目を覚ました和哉が玄関先にいた柚希に気がつき、無我夢中で飛びついてきたのだ。
『僕も一緒に行くから、どこにもいかないで』
(和哉、結局あの頃から変わってない)
あの必死だった幼い和哉を思い出して、その弟に揺さぶられ犯されているというのに、柚希は思わず(仕方ない奴だな)とくすり、と笑みを零した。
しかしあの小さかった和哉はとてもとても大きく凛々しくて、ちょっとまだ不安定なところもある、愛すべき若者に成長した。
そんな和哉に身体ごとゆっさゆっさと揺さぶられて、こんな時、柚希は弟との体格の違いを思い知る。
(気持ちいぃ、死にそう)
頭の芯から痺れるような快感が全身を包んで、多分柚希は何度か中で和哉を喰い締めながらイった気がした。
和哉も兄に包まれその締め付けに低く呻くと、一度硬さを保ったままの長大な和哉自身をずるりと引き抜く。ぐにゃぐにゃの桃色の軟体生物になったように、布団に沈み込んでいこうとする柚希の桃色に上気した艶めかしい身体をうつぶせた。
体勢が変わり、さらに深く交わろうと推し進められる腰から、柚希は無意識に逃げを打つ。しかし逃さないとばかりに腰を両手で抱え上げられると『細い、壊れそうだ』などと熱にじくっと浮かされた声で呟かれた。
柚希はそんな和哉の掌を手繰るようにがしっと掴み上げ、後ろを振り向いて弟と目を合わせると、妖艶ともいうべき貌で言い放つ。
「壊れねぇ。がんがん、こい」
試合中、味方を鼓舞する様に叫ぶ柚希の鬨の声はチームの間で有名だった。OBになってからも和哉は何度か応援席からの兄の声に励まされ、そして今はその声は和哉だけに向けられ、欲望を煽られている。
「柚にい、かっこいい」
綺麗より、可愛いより。かっこいい。
弟からうっとりと、一番言ってもらいたかった言葉を貰ってにんまりと唇だけを吊り上げた柚希は、しかしすぐにその余裕を失うほどに和哉から激しく突き上げられてた。
「兄さん、ゆずき!!」
箍が外れた和哉の腰遣いは凄まじく、奥に放たれた形跡はないまま柚希が何度気をやっても意識が戻るとまだ揺さぶられているという事態に陥った。
途中何度か『もうダメ、、無理』と呟いた気がしたが、そのたび和哉に慰められるように口づけを主に上半身のそこここに受け、その穏やかなやり取りに微笑めば、艶美な笑顔に興奮した和哉に齧られて……と繰り返し続けた。
しかし幸い『開始時刻』が早かったということもあり、普段の休日前の『真夜中から明け方まで』という事態は避けたらしい。
最後は気絶していた柚希が喉の渇きを覚えて明け方目を覚ますと、部屋はまだ真冬の朝方らしく薄暗い。布団から出るのが億劫でもぞっと寝返りを打てば、身体の節々が絶妙に痛くて顔を顰めた。
(和哉め……。二日連続で良くも思い切りやりやがったな)
煽ったのは自分だという自覚もあるし、色々セックスで有耶無耶にするのはよくはないとも思いつつ。途中からはお互いに盛り上がってしまったことは否めない。つまりは気持ちよさが先行して流されてしまったのだ。
あらぬ液体云々は全て拭き取られ、きちんとふわもこパジャマを着せられて、自分のベッドに寝かされていたが、和哉が隣にいない。
「痛っ。和哉!!」
多分齧られて血でも滲んでいそうな首を巡らせ和哉を探すと、昨晩かなりぐちゃぐちゃになったはずの布団の方で和哉は色違いのの紺色のパジャマを着こんで、満足げな安らかな笑顔で眠っていた。
多分そこここの片づけをしてそう遠くない時間に眠りについたばかりなのだろう。珍しくぐっすりともいうべき脱力しきった姿で寝ているのが見て取れた。
「くそ、満足そうな顔しやがって」
窓の外、星すら瞬く。仕事の早番の出勤時刻まではまだ間がある。暖房の切れた部屋は極寒ともいえ、布団から顔を出した息が白く見えてもおかしくないほど。枕元にいつも置き去りのリモコンを手で探って部屋を暖めなおすと、柚希はベットから下の布団にごろりんっとわざと転がり落ちた。
「ぐっ、うわっ」
寝こけている時に急に上から兄にダイブされ、和哉が驚き呻いて目を覚ます。
「寒い! 中入れろ」
「え、あ? 兄さん?」
もぞもぞと和哉の布団にもぐりこめば、沢山敷かれたバスタオルのややごわつく感覚に柚希は頬を染めた。
(昨日、大分汚しちゃったのかな……。乾燥機かけないと駄目だろこれ)
多分乾燥機をかけようにも木造アパート内は音がそこそこ響くので昼間にでもやろうと思っていたのだろう。せっかく親から持たされたふかふか布団を汚してしまって流石に罪悪感が漂いつつも、柚希はまだ寝ぼけているのかいまいち反応の悪い弟の身体に大木にくっつくセミの如く張り付いた。
「おい、和哉。昨日はよくもやってくれたな」
「ごめん」
詰りつつもどこか甘い声になってしまうのは、すぐさま長い腕を回して抱き返してくれる和哉の胸の暖かさに心も身体もすぐにとろとろと蕩けてしまうからだろう。
冬のぬくぬくの布団に入っていたら、いろんな怒りやわだかまりなどすぐにショコラに浮かべたマシュマロみたいにふわりと溶けてなくなりそうだ。
今なら昨日言えなかったことをきちんと伝えられそうな気がして、柚希は顔を胸にこすこすと擦り付けてから訥々と伝え始めた。
「……晶のあの時計と手紙のこと。あれが入っているって知ってたら流石に俺も受け取らなかった。晶の家に忘れてきたイヤホンケースと、代わりのイヤホン買ってくれたって言われて渡されたから。すっかりあいつに担がれた。だからすぐ、高価なものだし、きちんと返したいって言おうと思って……。あいつに連絡とろうとした」
「……そうだったんだね」
「とはいえ。なあ。そもそも全部受け取らなければお前に嫌な思いもさせないですんだ。それは事実で、その点はその……。ごめん」
素直にそういって腕の中で頭を下げたら、つむじに向かって和哉が唇を落としてくる優しい感覚が伝わってきて、柚希は胸がいっぱいになった。
「僕こそ、乱暴にしてごめん。……わかったよ。兄さんはきっと優しいから、晶先輩が訪ねてきたら無下にできない。それにきっと……。あの人から言わせたら、僕こそ兄さんを奪った極悪人なんだろうからね」
だからどんなことをされても仕方ない、言外に仄めかして自嘲気味に呟く和哉の身体に、柚希は腕はおろか足まで回してぎゅぎゅっと抱きしめた。
「お前が極悪人なら、俺だってそうだ。……俺さ、晶にもう一度気持ちを確かめられたんだ。晶は、俺のこと、初恋だったって。βの頃からずっと好きだったって」
「……」
素直な和哉は再び柚希の身体を抱き込んで離すまいとする仕草を見せたから、柚希は押し付けられた胸からごそごそと顔を仰のかせ、和哉を上目遣いに見上げる。
「だけど、俺。ちゃんと晶に言ったから。『これからの人生、離れずに共に過ごしたいのは和哉だ』そう、ちゃんといったから……。あいつ余計に傷つくだろうと思ったけど、きちんと言った方が、いいだろ? ……だから、うわっ」
和哉が突然柚希の身体をひっくり返すと、下敷きになった飼い主にのしかかる大型犬のように押し倒してた。そして熱烈に柚希に口づけてきた。
「嬉しい……。兄さん……。柚希」
興奮する弟を尻目にされるがまま口づけを受けていた柚希は、逞しい弟の腕に再びぬいぐるみのように抱きしめられて二人そろって布団に寝転がった。
互いの体温ですっかり温まった布団の中。ほっとしたのか再び眠気が襲ってきて、長い睫毛を伏せるといつも通り弟に甘え口調で命令した。
「……6時には家出るから……。あと一時間したら起こして」
「分かったよ。ちゃんと送っていくから」
「……晶には、時計返すから」
「わかったよ」
「……」
すうっと、寝つきのいい柚希は再び夢の中へ。
和哉はすっかり目が覚めてしまって、それでも離れがたく口づけの間、柚希が必死に握りしめた和哉のパジャマの襟元のボタンが外れたのを、満ち足りた気持ちで触れて、柚希の隣に添い寝をすると乱れた黒髪をいつまでも撫ぜていた。
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