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第一話 陥る 2/1
「で、でもまだ倒産したわけじゃないんだろう?」
顔を手で覆いながら父は首を横に振る。
「このままでは倒産だ。今月末には納品するはずだった開発中のソフトも手元には無い。何もかも持っていかれた」
「倒産……倒産したらどうなるの?」
「……損害賠償や社員への給料……会社を売りに出して……どれほどのものが残るかも分からない……千佳は実家に帰す。お前も母さんと行け」
「そんな……学校は?……俺、来月には卒業して大学に……」
入学金はすでに納めている。大学の授業料も前期分を一緒に納めたはずだ。だから、半年は何とかなるかもしれないが、大学はこの近くだけど、母さんの実家は地方だ。とても通える距離ではない。それに1人暮らしなんて今の状況ではできない事は明白だ。
「お前には悪いと思っている。すまない隼人」
父は机に額が付くほど頭を下げた。
「父さん」
横を向くと母さんはエプロンで涙を拭いていた。
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