4 / 78
第2話 救いの光
『バタンッ』
「千佳っ、隼人っ」
父さん?
玄関の開く音と同時に父の声が家中に響いた。
「みつかったっ、みつかったぞ」
興奮気味に叫ぶ父の声を聞きながらリビングに駆け下りた。
「支援してくれる企業がみつかった」
「えっ」
「よかったじゃないっ」
母さんは父さんの抱きついて喜んでいる。一頻り喜びを分かち合うと父さんは僕たちをソファーに座らせた。
「会社は買収されることになった。社員全員は無理だが、半数以上がそのまま雇ってもらえることになった。損害賠償の手続きは今からだが、それも保証してくれる。我が社の開発ソフトの全ての権利を譲与することにはなったが、これ以上の好条件はない」
「そうなんだ……父さんは? 父さんはどうなるの?」
「俺は……残務整理をしなければならない。借金が全部なくなるわけではないから……須藤さんのところで……」
須藤さん? 聞き馴れない名前に首を傾げた。
父さんはまだ仕事が残っているからと急いで家を出て行っ。
父さんは早速残務処理に追われるようになった。このままここで生活は続けられようだが、これまでのような生活は保障されない。父は無職になるようだし、母さんはパートに出るだろう。僕は大学に行きながらバイトをはじめようと思案していた。
夕飯が済み、3人でリビングにいると父さんが話し始めた。
ともだちにシェアしよう!