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第2話 救いの光 2/2
「須藤さんが……撫子を嫁に貰いたいと言ってきた」
「え? 嫁? だって、撫子は留学中で……」
「今すぐと言うわけではなくて、嫁入り前提に引き取りたいと申し出てくれて……」
「何で、なんで撫子が? だって、その須藤さんって……若くはないんでしょう?」
父さんの会社を買収するほどの大会社だ。その社長が撫子を嫁に貰いたいなんて言うほどの年齢なわけがない。愛人もしくは玩具的な要素があるんじゃないかと疑わざるを得ない。
「須藤さんは……まだ30代だと思う」
「え?」
「先代の須藤社長の跡を継いだのが5年程前で、傾きつつあった会社を今のように大企業まで伸し上げたのは彼の経営手腕だ。海外にも進出し、今も成長を遂げている。その須藤社長の……行く行くは社長夫人となってもらうために教育をしたという話で……」
「それで、撫子が選ばれたの? そんな大企業の社長ならいくらでも相手がいるだろう? なにも撫子じゃ無くったって……」
そんなに優秀なら撫子じゃなくたっていいじゃないか。
「……それが……交換条件のひとつだったんだ」
膝の上に置かれた拳は力で白くなり、父さんは唇を噛み締めて俯いている。
「撫子は? 撫子には話したの?」
「ああ。明日、日本に帰ってくる」
撫子も知っている。母さんを見ると母さんも知っていたらしく頷くだけだった。僕だけが知らされていなかったようだ。
「先方は撫子のことを調べていた。須藤社長は……嫁の獲得も兼ねて我が社に合併を持ちかけてきたんだ」
「そ、そんなの人身御供じゃないか。政略結婚でもないし、人身売買だっ」
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