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第3話 帰省 3/3
「このたびはこのようなことになってしまい、本当に申し訳ありません。撫子さんとは以前からお付き合いをさせて頂いておりまして、撫子さんの卒業を待ってこちらにはご挨拶に来る予定で……」
「撫子は、撫子はまだ成人前なんだぞっ」
「ですから……子どもはまだ先の予定ではあったんですが……撫子さんの結婚話が出てしまって私たちも慌ててこうして日本に帰ってきたんです。本来なら、アメリカの私の実家へご両親を招待して挨拶をさせて頂くべきところでしたが……」
「そんな勝手を許すわけがないだろうがっ」
「父さんっ、ちょっと落ち着いて」
母さんと一緒に父さんを抑えるが、父さんは頭に血が上っていて今にも目の前のマーティンに掴みかかりそうな勢いだ。
「順番が違っている事は認めます。ですが、僕は撫子さんを……」
「絶対に許さんっ」
「許してもらおうなんて思ってないっ。父さんの許しなんて要らない。私は、私はマーと一緒なら他に何もいらない。この子と……マーがいればいいの」
「親の許しがなければ結婚できんのだぞ」
「そんなのいい。私が20歳になるまで待てばいいだけなんだから」
「馬鹿なことをっ、お前はいつも自分の我ばかりを通して……」
「お父さん。撫子っ。もうやめなさい」
母さんが間に入って2人の言い合いを止めた。
「撫子も父さんも座りなさい。撫子も長いフライトで疲れたでしょう。お腹に赤ちゃんがいるならあまり興奮しないで、ちょっと落ち着きなさい」
母さんはそう言うと撫子をソファーに座らせて、マーティンもその横に座らせた。
「お父さんも座って。今、コーヒー淹れてくるから」
母さんはそう言うと台所の方へ行った。押し黙ったままコーヒーが出るのを待つ。しばらくすると母さんがコーヒーをテーブルに並べた。
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