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第3話 帰省 4/3
「いつから、いつから付き合っていたんだ?」
父さんは少し落ち着いたのか先ほどまでの荒げた声音とは違っていた。
「私が中学の時にマーティンがこっちに留学生として来ていた頃に知り合って、私が付き合って欲しいって告白したの」
「だから、お前はアメリカに行ったのか?」
「違うっ。アメリカへは語学勉強をするために行ったのよ。父さんにマーティンを追いかけるためにって言われないために、私必死で勉強したのよ。就職するって言ったけど……本当は大学にも受かっているの。子どもができたから休学して育てながら通う予定で……ごめんなさい。ちゃんと……話しておけばよかったのに……ごめんなさい」
撫子の声が震えて頬を伝った涙が床に落ちた。
「撫子」
黙っていた母さんが撫子を引き寄せて抱き締めた。
「……ごめんなさい……ごめん……」
泣き出した撫子を母さんは抱き締めて髪を撫でた。遠いところで撫子は1人頑張っていた。恋に盲目ならないように必死で勉強して、目標を持って頑張っていた。マーティンとの仲を認めてもらうために。
「お父さん。申し訳ありませんでした」
マーティンが深々と頭を下げた。
「……謝るようなことをしたんじゃないだろう。それよりも言うべきことがあるだろう」
マーティンは顔を上げると泣いたままの撫子の頭を撫でて、「彼女を私にください。2人で幸せな家庭を作らせてください」と言った。
「撫子……撫子はこうと言ったら聞かないからな……中学か……そんなに長く貫いてきた想いなら認めざるを得ないだろう……撫子。大事にしなさい」
父さんはそう言うと大きくため息を付いた。
「須藤さんには私が掛け合ってみよう」
振り出しに戻ってしまった。
僕も父さんの隣に座る。
「ねえ、花嫁候補ってことだけなら、嫌われちゃえばいいんじゃない?」
涙を拭いた撫子がそう言いながら首を傾げた。
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