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第4話 妙案 1/4
「無理っ無理無理無理っ」
僕はありったけの力で首を横に振った。
「大丈夫よ。絶対」
「無理だって……絶対ばれるし、そんなことになったら……」
「そんなことにならないようにあんたが頑張ればいいのよ」
撫子は胸を張ってそう言い切った。
「同じ顔なんだから」
「同じ顔でも性別違うだろっ」
嫌だし、そんなの絶対に無理っ。
「大丈夫よ。男に見えないから」
撫子はさっきまでとは打って変わり楽しそうに笑う。
「そっ、そんな事はないっ。僕は男だっ」
兄妹で言い合っているのを両親とマーティンはソファーに座って見ている。
「母さんも父さんも黙ってないで何とか言ってよ」
撫子には口で叶わないので2人に助け舟を出してもらおうと試みるが2人とも「嫌われてしまえばうちの問題じゃない」とか「父さんが再就職して借金を返済するまでだから」とか更に僕を窮地に追い込む。
撫子の思いつきは僕が撫子の代わりに須藤さんのところに行き、結婚するまでの花嫁教育期間中に嫌われて実家に帰されるというもの。
撫子は身重だし、それがばれても困るのでこの際マーティンと渡米して隠れていてもらうことになった。
話はどんどん進んで行く。
「家族を救うためだ」
父さんはそう言って、「隼人……撫子。頑張って来い」と肩を力強く叩いた。
嫌だっ。
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