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第7話 憂鬱な日々 1/7
嫌われようにも伊織さんとは会うことがない。初めて会った翌日には恵美子さんから預かったという本や書類を渡された。
広い屋敷には離れに住み込みの家政婦の恵美子さんのほかに通いのお手伝いさんが2人、掃除などのために日替わりでやってくる。食事は厨房に1人料理人がいて、お菓子などもこの人が作ってくれる。
僕の部屋は2階の隅。隣は僕用のウォークインクローゼット。その隣が浴場。階段を挟んだ奥は書庫になっている。1階は食堂と簡単なパーティーの出来る広間があって、3階に伊織さんの書斎と寝室。入った事はないが、寝室横にも浴場があって、2階の浴場は実質的に僕専用である。
庭はとても広くて表の庭は芝生が植えられ、ラベンダーなどのハーブも植えられている。裏庭には中でティータイムを楽しめる小さなテラスがあり、その建物を隠すかのように蔓バラが生い茂っている。
朝、支度を恵美子さんが何度も手伝うと言ってきたが、男だとばれるわけにもいかないので、そこは丁重に断った。ウィッグを付けるのは家にいた時から練習していたから大丈夫だが、着替えには戸惑った。
全て当家で用意したと言われた日用品は全て女性物。それは当たり前だけど、僕はかなり途方にくれた。
服や靴、アクセサリーに至るまで細かく用意されたそれには下着も含まれている。
もうね。どうしていいか困るようなデザインばかり。上はいいとして、下は困る。レースのヒラヒラが付いていてリボンも付いている。もし、もしも彼女がいてこんな下着を履いていたら可愛いだろうなと思えるほど。だけど、自分が履くとなると話は別。赤くなったり青くなったりしながら仕方なく履いている。
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