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第11話 脱走 1/11

「まあ、いいでしょう」 その言葉に嬉しくて顔を上げた。 伊地知さんの横には伊織さんが立っていて、「よかったね」と笑った。 その嬉しそうな笑顔に喜んでくれていることを悟って、胸が跳ねた。練習に付き合ってくれたから喜んでくれたんだろう。 「では着替えて来てください。表で待っていますので」 伊地知さんはそう言うと伊織さんを促して一階の廊下を進んで行った。 「撫子さん。お着替えが用意してありますからお部屋へ」 恵美子さんに促されて2階の自室に向かった。クローゼットの中から恵美子さんが持ってきたのは胸元に大きなリボンのあしらわれた薄桃色のワンピースと白いシフォンボレロだった。 結婚式の2次会にでも行くような格好。会社見学に行くだけなのにとも思ったけど、やっぱり未来の社長婦人だからかなと思いなおし、「着替えは自分でします」と恵美子さんには部屋から出て行ってもらった。 溜め息をついて用意された服に着替えた。もちろんストッキングも3週間近くになると馴れて伝線もしなくなった。 こんなことに馴れてもなぁと思いながらも服を着替えた。髪はワンピースに合わせたシュシュが置いてあって手こずりながらも少し摘んで結んだ。 一緒に置いてあった靴はゴールドカラーのパンプスだった。 ヒールが低くてよかった……。 撫子ならきっと喜んで着ただろうな。鏡に映るのは自分だけど、同じ顔の撫子と重なる。

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