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第11話 脱走 6/11

退屈できょろきょろしていると、店員がアイスティーを持ってきて小さなサイドテーブルに置いた。 「ありがとございます」 店員の女性はニコニコと笑って、「須藤様が女性を連れて来るのは初めてです。ごらんになりますか?」と言った。 僕は離れたところで服を選んでいる伊織さんを見て「少しだけ」と言って立ち上がった。 「レディースはこちらです」 迷わず向かったメンズコーナー。店員は僕が迷ったとでも思ったのだろう、慌ててレディースコーナーに向かった。 「もう少しシックなものがお好みですよ」 店員に言われたことが分からなくて首を傾げると、「奥の海外向けデザインなどをよくお買いになられますから」と言われて、僕がメンズコーナーに行ったのを伊織さんの物を選ぼうとしたのだと思われたことに気が着いた。 「今度、1人で来た時に改めて選ばせてもらいます」 もう来る事はないかもしれないけど。 撫子の好きそうな白いレースのワンピース。 撫子は元気にしているだろうか。 3ヶ月と言っていたからそろそろ5ヶ月に入る頃だろう。いつ産まれるのか聞くのを忘れたなぁ。 手に取って顔を上げるとそこの鏡に自分の顔が映った。 撫子に見える。双子だから仕方がないけど。 その鏡の向こうにベビー服が並んでいるのが見えた。 ワンピースを戻してそのコーナーに近づいた。 「生まれたばかりってこんなに小さいんだ……」 小さな小さな靴下を手に取った。 撫子……。 胸が苦しいような痛いような感覚に囚われてギュッとその靴下を握り締めた。 「欲しいの?」

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