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第11話 脱走 8/11
「うん。すごくいい」
出てきた僕に伊織さんは上機嫌に笑って、「これにする」と店員に告げた。伊織さんは僕が着替えている間に着替えていた。
スーツ姿とは違う格好。
光沢のあるブラックワインカラーのブーツカットジーンズと黒いラインの入った白シャツ。袖を折った腕にはレザーのブレスレッド。
すごく、カッコいい。
髪も普段とは違いトップを持ち上げている。いわゆるお兄系とかモード系とでもいうファッションだ。
こんなにも変わるんだ……。見惚れている間に伊織さんはカードを出して会計を済ませて、僕の手を取った。
「服は家に送って」
そう言って店を出た。
「少し歩こう」
急に手を取られて慌てた。引かれながら歩き出す。
「……でも……」
「あれは何?」
伊織さんは楽しそうに笑って人だかりが出来ている方向へ僕を連れて行く。ブランドショップの立ち並ぶ通りを抜けて、若者の多い通りに出る。人ごみなんて気にしない。次から次に行きたいところに僕を連れまわしてニコニコと笑う。
誰もが伊織さんに振り返る。モデル並みに格好良くって人目を引いた。
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