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第12話 それを知る 1/12
気になる店や露店を見て、笑い合った。昼食はファーストフードを食べた。
久しぶりな感覚。人ごみ。賑わい。
どれもが楽しくて時間はあっという間に過ぎていく。
伊織さんはかなり年上のはずだけど、それを感じなかった。
外はすっかり暗くなって、タクシーで最初に告げたショッピングモールに着いていた。僕は誰にも会わないことを願いながら伊織さんに手を繋がれて中を歩いた。
閉店間際ともあって人は少ない。それに平日だ。
伊織さんは少し足早に中を通り抜けた。
「あれに乗りたい」
伊織さんが指差したのは有名な大観覧車。
東京タワーとスカイツリーが同時に見ることができて、夜にはベイブリッジも見える。
カップルのデートコースにもなっている有名な大観覧車。
「……乗りたくない」
だって、僕たちはカップルじゃない。それにデートでもない。
「乗ろう。せっかく2人で出かけたんだし」
「乗らない」
「じゃあ、近くまで行こう。俺、あんなのに乗ったこと無いし。恋人同士は乗るんでしょう?」
こ、恋人同士……。
「ち、違う……ぼ、私はそんな……」
「俺たちのことじゃないよ。そう見えるかもしれないけどね」
伊織さんは笑って「側で見るだけだから」と僕を連れて歩き出した。
近づくとその大きさは分かる。
僕も初めて来たけど大きい。首が痛くなるほど見上げて、「イルミネーション綺麗だね」と伊織さんに言われて頷いた。
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