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第12話 それを知る 2/12
「恋人同士で乗ったらきっと楽しいだろうね」
「……うん」
頷いた。きっと幸せな気持が溢れているだろう。2人きりの空間とロマンチックなシチュエーション。
「撫子と……君と乗りたい」
少しだけ口端を上げて笑う伊織さん。
「次に来た時は乗ろうね?」
「………うん」
頷いてしまった。それは次に来た時には恋人同士で乗ろうと言われているようなものだから。
気恥ずかしいような、甘い感覚が身体中に広がる。
「最終ってのがいいよね。他の人も少なくて。乗るなら最終がいいな」
「……そうですね」
同意した。今だけは素直に頷いた。
そしたら少しだけ気持ちは軽くなった。
2人で並んで見上げていると、観覧車に並ぶ列の誘導員のスタッフがチラチラとこっちを見ているので、「少し離れませんか?」と聞いた。
「そうだね。海の方まで行こう」
手を繋いだまま歩き出す。
今日は一日中手を繋いでいた。こんなにも長く人と手を繋いでいた事はなくて、最初は戸惑ったけど、その行為にも馴れると自然と手は繋げた。
それに伊織さんはギュッと掴んで離さない。
すごくお互いの距離が近づいた気がする。
すぐ隣を歩く伊織さんを見上げるとすぐに見下ろされた。
「鷹が迎えに来てる」
「え? どうして?」
「GPS。遊びの時間は終わり」
遊びの時間……。
「楽しかった?」
もう少し歩くと海に繋がる道路に出る。周りには誰もいない。伊織さんは立ち止まって僕を振り返った。
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