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第12話 それを知る 3/12

「楽しかったです」 閉じ込められていた開放感からなのか、伊織さんと一緒だったからなのか、時間はあっという間に過ぎてしまった。 伊地知さんが迎えに来ているのを知って、すごく残念に思ってしまった。 もう帰るからとは思わなかった。 伊織さんと離れるんだと……思ってしまったから。 もっと……一緒にいたいと思ってしまった。 「観覧車が映ってる」 唇に一瞬だけ、その唇が触れた。 それはすぐに離れて、グイと腕を引かれてよろけそうになりながら引きずられて歩き出した。 その強引な動きにキスされた動揺なんて飛んでしまう。 海へ続く道に出ると、今朝乗って出た須藤家の車が停まっていて伊地知さんがその横に立っていた。 「次は一緒に乗ろう」 小さな呟き。 僕は顔を上げて伊織さんを見上げた。

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