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第13話 再確認 1/13
散々伊地知さんに嫌味を言われて、またもとの憂鬱な日々に戻った。
でも、ふと思い出すのはキス。
「撫子さん。聞いてらっしゃいますか?」
伊地知さんはため息を付いてから、「今夜は謝恩パーティーにご出席頂きます」と言って以前渡されていたスケジュールを指差された。
あの日一日を遊んで過ごしたせいで伊織さんは忙しいらしい。
「ほら出かけますよ」
伊地知さんは僕に部屋を出るように言う。
「どこへ?」
謝恩パーティーは夜だからまだだいぶん時間はあるはずだ。
「それも聞いてなかったんですか? 今から美容室へ行ってドレスに着替えてもらいます」
「び、美容室?」
それは困る。
とてもよく出来たウィッグだとはいえ、美容師さんに見られたらすぐにばれてしまう。
今までは自分で何とかしてきたけど……。
「髪を人に弄られるのは嫌いなんです」
「今日だけ我慢して頂きます」
「嫌です」
「それでは困ります」
僕がそれでは困りますっ。
「じゃあ、私は行きません」
「わがままをおっしゃらないでください」
「じゃあ、じ、自分で、自分で髪は結います」
「大勢の方が来られるのですから、今日は美容院で整えて頂きます」
伊地知さんは引かない。何度も何度も言い合いをして、「いい加減にしなさいっ」と怒鳴られてしまった。
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