52 / 78
第13話 再確認 3/13
首を横に振る。このまま諦めて屋敷に返してくれないだろうか。
「数時間だけですから」
手を引かれて車から降ろされる。伊織さんと行ったブランドショップでもそうだったけど、店長自らが出迎えて他のお客さんとは違う室内に通された。
「後でお迎えに参ります」
伊地知さんは僕にそう言うと美容院を出て行った。
「あの、よろしいですか?」
戻ってきた男の店長さんはにっこり笑って、「大丈夫ですよ」と言って椅子に座らせた。
今日は小花柄のブラウスにスカートを履いている。長い髪は緩く巻いていた。
「須藤社長から伺っておりますから」
店長さんは笑って、「長いのが流行ってますからね」と言った。
「あの……」
何のこと?
付いていけずに首を傾げる。
「外しますよ」
「え??」
店長さんはそう言って僕の頭から器用にウィッグを外した。
胸まである長いウィッグを外すと、来た時よりは若干伸びた僕の髪。襟足が肩に付くほどのショートだ。
「短いのもとても似合っていますよ」
鏡越しに微笑まれて戸惑う。
「あの……いお……須藤社長はなんて言ってたんですか?」
「いつもウィッグだから地毛の長さは分からないけど、彼女の好みにしてほしいと伺っております」
知っていたんだ……えっとじゃあ……どこまでばれてるの?
僕が男だってこととかももしかしてばれているの?
ともだちにシェアしよう!