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第14話 望む嫌悪 1/14

連れて行かれたホテルは有名な一流ホテル。そのホテルの大広間を貸切りで行われるパーティー。 社員だけが参加すると聞いていたが、ロビーにはドレスアップした男女が談笑していた。 伊地知さんがすぐ横を歩きながら、「俯かないでください。胸を張って」と囁く。 僕たちを避けるように社員たちは道を開けて食い入るように見つめる。その視線を痛いほど感じながらゆっくりと中へ進んでいく。 ホテルのエレベーターホールまで来ると、「社長は少し遅れます」と言われた。 「……帰りたい」 「またそれですか。今日はどうされたんですか?」 だって、ここで婚約者だと発表されたら僕はもう帰る事はできない。 これ以上騙したくない。 撫子でいたくない。僕は……僕を見て欲しいと望んでしまった。 僕が僕になっても伊織さんは振り向いてくれないだろう。僕なんてきっと相手にしてもらえない。 そんなの苦しい。 僕は今来たホテルの入口に向かって走った。 「撫子さまっ」 後ろから伊地知さんが追いかけて来ている。 「わぁあっ……」 ホテルのロビーは毛足の長い絨毯が敷かれていた。馴れないヒールの靴はその長い毛足に躓いた。 あ、転ぶ……。 入口の自動ドアに手を伸ばした。室内は明るく、外が暗かったため、入ってくる人が分からなかった。 僕の手が届くより先に自動ドアが開き、掴んだのは目の前のスーツ。

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