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第14話 望む嫌悪 2/14
ギュッと抱き留められて、「そんなに会いたかった?」と間延びしたような独特の口調で話しかけられた。
「仕事で遅れただけだよ」
「し、社長……」
後ろには伊地知さん。僕は逃げられなかった。
「足、大丈夫?」
抱き支えられたのを離して跪くと僕に脱げてしまった靴を履かせた。
「……痛い……」
唇を噛み締めて俯く。痛い。
痛い。
鼻の奥が熱くなる。涙が溢れてきた。
「撫子? そんなに痛い?」
跪いたまま見上げられて、コクンと頷いた。
痛いのは足じゃない。
胸が苦しい。
抱き締められて自覚した。僕は……彼が好きなんだと。
離れたくないとその胸に抱き締められたいと願ってしまった。
「いお……わぁっ……」
名前を呼ぶより先に抱き上げられた。
「足を挫いたらしい。鷹。医者を部屋に呼んで」
僕を抱き上げてロビーをエレベーターの方へ向かって横切る。
先ほどとは違う視線に晒されて恥ずかしさに赤くなる。
エレベーターに乗り込んでドアが締まると同時に床に降ろされた。
「逃げても帰るところはないって前に言ったはずだよ」
さっきまでの柔らかい口調とは違う厳しい口調。
人が違うんじゃないかと思うほどの。
「……ごめんなさい……」
俯いて床を見つめる。
「俺が仕事で遅くなったからよかった」
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