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第15話 約束の場所 1/15
夜中に突然帰ってきた僕に両親はとても驚いた。
伊地知さんは、「こちらに非がありますのでこの度の事は責任を持って契約を続行させて頂きます」と挨拶し、後日改めて挨拶に来ると約束して帰っていった。
両親は何事か聞こうとしている事は分かったけど、僕は急いで女装から開放されたかった。
早く元に戻りたい。
部屋に帰るなり僕は着ていたドレスを脱いで、くしゃくしゃに丸めるとゴミ箱に投げ入れようとして……そのまま抱き締めた。
抱き締めたまま出て行ったときと変わらないままになっている自分のベッドに座った。
伊織さんは確かに僕の名前を呼んだ。
それは僕が男であると知っていたからだ。
それでも、僕が望むように『嫌い』と言ってくれた。
僕を解放してくれた。
熱い情熱を持って僕にキスをした。
あの口付けは撫子ではなく、僕にしてくれたもの。
僕を見つめて、『嫌い』だと言ってくれた。
いつから、いつから僕だと気が付いていたんだろう。
男だと分かっていたのなら何で……。
3日間はあっという間に過ぎた。
『待っている』と言われた。
『一緒に乗ろう』とも。
場所は分かっている。時間も合っている。
僕はリビングに降りた。
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