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第16話 囚われる 1/16
「今日は鷹は来てないから」
観覧車を降りて歩き出す。
キスをされ続けて夜景なんて見てなかった。
「恋人同士もこうやってキスをする?」
悪戯っぽく笑ってキスの間に囁かれた。
「僕も……観覧車に初めて乗ったから……分からない」
「乗ったことなかったの?」
「乗った事はあるけど………こ、恋人同士で乗ったことない」
キッと睨みつけると、「じゃあ、みんなそうなんだよ」とキスを続けた。
降りる直前にキスから開放されて俯いて降りた。
今更気がついたけど、男2人で乗って変に思われなかっただろうか……。
俯いたまま後ろを付いて歩く。
ジーンズとシャツという僕とさして変わらない格好。だけど、人目を引く魅力を持っている。
「隼人?」
歩調が遅くなったことに伊織さんは振り返った。
「どうしたの?」
「いえ……今更だけど……伊織さんは僕で……僕でいい?」
社長だし、大人だし、男だし、子どもだって必要だし……次々と浮かぶ不安。
僕は何一つ……何一つ叶えることが出来ない。
「本当に今更だね」
立ち止まった伊織さんは僕を抱き締めた。それは優しく包み込むように。
抗えばすぐに離れてしまうほどの弱さで僕を抱き締める。
「俺は言ったよ。何不自由のない生活を約束するって」
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