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第16話 囚われる 3/16

「僕はペーパーだから……」 高校の卒業間際に取ったから免許はあるけど、車が無かったので運転はしていない。 エンジンをかけて走り出した。そのハンドルを掴む手。指綺麗だな。 横顔を盗み見て他の車のライトが当って陰の出来るのに見とれていた。 家って……伊織さんのお屋敷のことだよね。 車の中の時計で時間を確認して、恵美子さんがもう帰っていない時間だと気がついて途端に意識した。 帰ったら……2人きりだ。 いや、今も2人きりであるのは変わらないけど、こ……恋人……同士って言われて、妻にってプロポーズされて……この間とは状況が全く違うわけで……。 恥ずかしさに視線を窓の外に移した。 車は須藤家の裏口から中に入り、駐車場に止められた。 先に降りた伊織さんを追いかける。 「裏口があったんですね」 「ここはセキュリティーが解除できるからね。夜に帰ってきた時はここから入ってるよ」 「え? 伊織さん帰って来ていたんですか?」 「ん~。毎日じゃないけど、週に4日は帰って来てるよ」 じゃあ、僕は1人じゃなかったんだ。 「知らなかったの?」 「だ、だって、帰って来る時は恵美子さんが『お帰りになられます』って教えてくれたし……」 「ああ。夜は何時になるかいつ帰れるか分からないから伝えてないだけだよ。寂しかった?」 首を傾げて笑う。 裏口から入って正面玄関前のロビーにたどり着く。 「さ、び、しく無い。それに、1人の方が都合がよかったし……」

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