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第16話 囚われる 5/16
お姫様抱っこなんて何度かされているけど、行き先がベッドなのはあまりに恥ずかしい。
すごく楽しそうに笑ってベッドの上に降ろされた。そのまま屈むようにして顔の両側に両手を付いて見下ろされた。
眩しかった電気は遮られたけど、その近い距離に慌てた。
「すごく真っ赤だよ。可愛い」
「あ、え、か?」
伊織さんは更に楽しそうに笑って、「落ち着きなよ」と言った。
この状況で落ち着けと言われて落ち着ける方がどうかしていると思うんだけど。
見下ろされたまま見上げているとフッと表情が変わる。
今までの飄々とした雰囲気から一気に身の引き締まるような雰囲気に変わった。
「隼人」
名前を呼ばれるのが嬉しい。
偽りではない僕自身を呼んでくれていることがこんなにも嬉しいとは思わなかった。
それに……こうやって押し倒されていることも嬉しかった。
僕を求めてくれていることを。
「………んっ……」
触れ合うだけの口付けを繰り返してシャツのボタンが外されていく。緊張に戸惑って視線を彷徨わせていると、「こうやって触られるのは初めて?」と聞かれた。
「……男だよ」
答えると笑って、「痴漢とか」と言われた。
「僕、普段は普通の格好だからないよ」
「そっか。そうだね」
笑いながらもシャツのボタンは全部外された。
何で笑っているのかその理由は分からないけど。
その綺麗な大きな手が直に肌に触れる。肩から胸に向けてゆっくりと撫でられるとくすぐったさに身じろぎした。
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