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金平糖7 若気の思いの行方

 男に中出しをされた。  よりにもよって。  友達でも、恋人なんかでもない――ほぼほぼと【赤の他人】に開発をされてしまった訳だ。  (アナル)の痛みに言葉も出ない。 「な゛っ」  額に脂汗も滲んでしまう。  BLを姉の本棚で見たことはある。絵がキレイで何冊か読んだが興味は沸かなかった。  この状況下で洸自身もまさか、どうしてと――困惑をしている。  黙ってしまった洸を他所に。 「独りよがりの想いは、いっそもう犯罪よ! 少しは頭でこの子のことを考えなさい!」 「そうだっ! 一回ヤったぐらいで自分のものになるなんて思うなよ!」 「……え。(ツノ)??」 「ん? なんだ、(マル)」  角を鋭い目で見る円に、角も口をへの字にさせる。 「そうだろう?」 「まぁ、……そうだけども」  嫌な予感に襲われる円に平も言い返す。 「洸みたいな冴えない普通の男を掘りたいって奴なんかいないし。好きになる女だっていない!」  ぐさ! 「!?」と洸の身体が身じろいだ。  確かに平凡で普通で、表情も怖いとさえいわれる自身はモテないのは事実だが。 (お前なんか! 恋愛対象にもなんねぇよっ!!)  唇を噛み締めて洸は内心で叫ぶ。 (オレの処女を奪いやがってぇえ゛っ!)  泣くに泣けない状況である。  自身が興味本位に平なんかに近づいたりしなければ。  こんな状態になんかならなかったはずなのだから。 (抵抗!? 抵抗なんかっ! ……抵抗なんか――)  洸は横目で兄姉に咎められている平を視た。 (有名人(イケメン)を傷つけるなんて、出来るかってんだよ!)  自身の頭の中。あのときの葛藤が甦り、頭を掻きむしる洸の様子に。 「ほら! こんなにショックなんだかんな! 船橋の奴は!」 「自分のことなんか、全く、想ってなんかいなかったんだ。当然だな」  角と円が、さらに平に叱咤をする。 「だって。その……僕は……あの」  徐々に泣き顔になっていく平の表情に「泣くなよ。泣きたいのは船橋でしょうが」「そうだ。馬鹿野郎」ととことんと陥れるように吐き捨てる。 「だってぇ。兄貴ぃ~~姉貴ぃい~~」  泣き声で角と円に平が声を掛けた。  あくまでも自分勝手な――洸への想いへの爆発。  若気の至り。 「あンたたちだってっ、同じ立場が出来たらするでしょう!?」  言葉にもならない。  理屈にもならない。  あるのは。  一点の放漫。  一点の傲慢。  一点の我儘。  最後に在るのは――どうしょうもない衝動的な愛情だ。  屈託もない。  曇りもない。  理不尽でしかない重い想い。  獣のような【発情期】が、相手からの問いかけに突発的に(タガ)が外れてしまったのだ。  後悔はない。  ないのは失念と未来への見取り図。  一切、相手からの許可もない行為。  相手を押し倒して一方的にしてしまった行為。  悪いことをしたと思ってなんかいない行為。  若気の至り。 「この機会を逃したらっ、もうっ、もう……洸とは、何もないまま卒業してたかもしれないんだからっ!」  間違いを決して認めることは出来ない。  間違いを決して見据える勇気なんかもない。  それを押し通そうと――必死だ。 「「最低だなっっっっ」」  角と円が声を揃えて平に吐き捨てた。  受け入れられなかった平の表情は顔面蒼白に変わる。  がくりと項垂れる平を洸も横目で視た。 (言い訳を言う(くらい)に、……冴えないオレなんかが好きなの!?)  バクバクバクバクバクッッッッッ!! (っへ、へぇ~~っふ、ふぅん????)  バクバクバクバクバクッッッッッ!!  残念な言葉を吐き終えたイケメンに洸の胸が高鳴ってしまう。  正直、嫌いではあった。平という存在は目障りだった。  本校や他校、その他にもファンクラブを持つ彼が――いい顔するのが眩しかった。  洸はイケメンは好きだった。  姉の影響でもあるが、推しメンもいる。  その推しメンはどこか平に似ていて、平を見る度に萌えたのは本心だ。  だが、ホモではない。  顔のいい――イケメンが好きなだけである。  だから。  顔のいい平は洸の中ではどストライクだ。  そんな彼から告白をされれば考えたかもしれないのだが。  告白をすっ飛ばして肉体から奪い、中を変えた彼を許すことは出来ない。 「ほんと。最低だわ、お前は」  ぶっきらぼうに低い口調で洸も吐き捨てた。  押し黙った平は弁明をする様子もなく歩く。  そして、平を責める彼らが目指した美術室へと着くのだった。 「ぁ、あの! も、もういいですからっ! ノーパンも下ろして下さいって!」 「ノーパン! っぶっは! あははは!! とぉっても、いいあだ名だねぇえ、角ぉうwwwww」と角のあだ名に円が吹き出して大きく口を開けて笑った。そんな円を角も口をへの字にさせて強く睨みつけた。 「気にするな。それで、自分の友達はここにいるんだな? 船橋」 「ぅう゛う゛……はい。いると思います」  言い負けてしまった洸の顔が角の肩に数かしさのあまりに落ちる。 「名前は?」 「松重小松です」 「お前とはどんな関係なの? その子は」  円が洸に硬い口調で聞き返す。  それに洸も受け応える。首を傾げつつであるが。 「え? 小松はオレの親友(ダチ)で――」  模範解答をする洸の言葉に被せるように平が言う。 「リョーマの奴が好きな男だよ」  リョーマの好きな相手という言葉(パワーワード)の強さに円の目がまん丸く変わる。  それは角も同様である。 「リョーマの奴が、好きな相手????」

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