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第12話
「ねぇ…お願いだから…正気に戻って…もう見ていられないよ…」
「だって!けいくんがいなくなったら俺はもう生きている意味なんてない!!」
「まだそんなこと言ってるの!?」
「だって…」
その時インターフォンがなった…無意識に体が震えだす。
「そんなに…震えてるじゃん…ねぇ。絶対そんなの幸せじゃない…俺出てくるから…」
俺は一歩も動けなくて蹲る…怖い…
弟が誰かと話してるけれど何も聞こえない。しばらくして足音が聞こえる。一人じゃない…
動け…動け…あいつがきたんだ…
ドアが開くと固く目を閉じた…動けない…殴られる…そう思っていたらふわりと抱きしめられた。
「光海…」
「え?」
「ごめん…もっと早く…お前を攫っておけばよかった…」
「…店長?何で…」
「菖蒲くんに相談されていたんだ…」
「菖蒲に?」
弟はバツが悪そうに俯いた
「君が変なやつと付き合っているということは聞いていたんだ…それで…どうにかしたかったんだけど…こんなになってしまって…ごめん…ごめんな…」
実は弟と店長は初めてあったときから気があって仲良くしていたのは聞いていたんだ。
「何で…」
「ごめん…俺が今夜どうしても外せない勤務で…けどあいつのことだからまた今夜やってくる…その時にお兄ちゃんの側にいて守って欲しくて…」
「そんなの!おかしい!店長には何も関係ないだろ!迷惑なだけだ…」
「関係なくないんだよ!俺は…光海お前のことが…」
それ以上聞きたくなくて手で口を塞ぐ
「何も知らないくせに…言わないで…何も言わないで…」
「俺は…もう出ないとならない…すいません。兄のことよろしくお願いします…」
「…わかった」
弟を見送ると店長はまた俺を抱きしめた
「本当に…やめてください…」
「いやだ…」
「今日は出勤でしょ?何でこんな時間に…」
「この間の代休だ。あの日お前を帰したこと後悔したんだ…あんな姿を見たのに引き止められなかったこと…だから…今度は迷いたくない…後悔したくない」
店長の優しい声に力が抜けた。気も抜けたのかぽろって本音が溢れた。
「…もう…疲れた…」
「うん…」
「本当はね…わかってるんです…こんなこと続けても何もならないことくらい…けど…俺にはあいつしかいないから…あいつがいなかったら生きてけないから…」
「そんなに好き?」
「好き…とは違うかな…」
「それなら…俺が攫ってもいい?」
「ううん…俺はだめです。店長には素敵な人がいるよ…もう俺は普通の人間ではなくなってしまったんだから…」
「普通ってなんだろうね…俺は普通はわからない。俺は普通なお前を好きになったんじゃないと思うよ。俺はお前を見てきたから…ずっと見ていたから…」
「それならいっそのこと…だめですね。」
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