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第13話
「もう無理だもんな…どうしようもなく光海のことを思ってしまってるからさ」
「趣味悪いですね」
「少し調子出てきたか?」
「すいません」
「まだ震えは…止まらないな…少し横になれ。俺は隣にいる」
そう言うとひょいと軽々俺を横抱きにして運ぶ
「お前…軽すぎ…ちゃんと食え。部屋はここでいいんだろ?菖蒲くんが言ってたんだ。奥は寝室だけどそこはだめって」
「はい。ありがとうございます」
ふわりと部屋のソファーに乗せられて撫でてくれる大きな手に擦り寄ってそっと目を閉じた…
目を覚ましたら隣で店長が眠ってて驚いた。初めて見る無防備な姿にふっと笑みが溢れた。
そっと触れてみるけれど起きる気配はない。疲れていたのにわざわざ来てくれたという事にトクンと音が鳴った気がした
さらさらと髪を撫でていると大きな足音が近づいてきた。そういえば店長が来てからドアロックをかけていたはずなのに…あいつの執念だろうか
大きな足音に気が付いた店長がゆっくりと目を覚ました
「…帰ってきたのか…」
「はい」
「また震えてる…」
店長はきゅっと手を握ってくれた
部屋のドアを乱暴に開けるとあいつはドカドカと入ってきてその場にいた店長を睨みつける
「俺のもんに手を出すなんて良いご身分だな…藍玉 」
実は店長とけいくんは同じ大学で会社の同期だった。けいくんの後輩だけどけいくんとは真逆な人だ。
この人が社員になるって聞いて俺も一緒にやりたいと思い大学卒業後以前から声をかけてもらっていたのもあり正社員になったのだ。親を説得するのは骨が折れたがそこそこ有名なブランドだったため了承を得ることに成功した
どんなお客様にも真摯に向き合ってこっちの押しつけでなく相手の意を組んでトレンドも取り入れながらその人に一番あったものを提供する。
どんな人も必ず笑顔で帰ってそこから口コミで広がっていってそうしたところを評価され新店舗である店の店長になったのだ。
「あんただったんですね。光海をこんなに傷つけた相手…相変わらずですね…。先輩。あなたは何も変わっていない。あんたのせいで何人も傷付いてしまったことを俺は知ってる。社会復帰できなくなった人も…力で支配するのは誰のためにもならない。俺はあんたの仕事ぶりは評価していました。けれど大切な部下である光海をこんなにボロボロにして…俺はあんたを絶対許さない」
「へぇ…言うようになったじゃん…じゃあさ。死ねよ。俺のもんに手を出したんだからさぁァァァァァ!!!!!!」
あいつは手に包丁を持っていた。鈍く光るそれが真っ直ぐに店長を狙っていた
「やめてっ!!!」
「お前が他の男を誑かすからだろ!」
前に出ようとした俺を店長は思い切り横に押した
「店長!」
「大丈夫だ」
ドスッ…
「やだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
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