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第14話
惨状が見たくなくて固く目を閉じ耳を塞いで蹲っているとそっと俺を撫でる手…恐る恐る顔を上げると俺を見つめる店長が微笑んだ。そして前を見据える
「…人を刺す勇気もないくせに自分より弱いやつには酷く当たる。あんた本当にクズですね」
「へ…?」
鈍く光る刃は部屋の壁に刺さっていた。それもなかったことのようにして冷静にそこに立っている店長がいた
「あんた虚しくないですか?そんなことして。わかってるんでしょ?光海の心はあんたにはないことくらい。恐怖で支配していることぐらい。あんたバカじゃないんだから」
「…」
「帰ってください。早く…震えている光海が見えませんか?」
ちっと舌打ちするとあいつは帰っていった
「…光海…大丈夫か?」
「店長…怪我は?ない?」
「ないよ。人のことより自分のこと心配しろ。な?こんなに震えて…涙…流してさ」
そっと俺の頬に伝うものを指先で救ってくれた。
そしてまた暖かく抱きしめてくれた
「光海…俺のとこに来ないか?…ここはまたあいつがやってくる危険性があるんだから」
「…できません…」
「…俺に守らせてくれない?」
「はい」
「何でそんなに頑ななんだ…」
「…俺の…彼氏はあいつですから…あいつしかいませんから…」
「光海…」
「大丈夫ですから…帰って下さい…俺…あいつ迎えに行かなきゃ…」
「帰らない」
「帰ってください!!早く!!」
ぐいぐいと店長を押して家の外に出した。
「光海…」
暫くそこに居た気配はあったけど暫くすると遠ざかる足音が聞こえて力が抜けた。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
あんな人に思ってもらえるなんて幸せだと思う。けど…だからこそ…俺じゃだめだ…あの人は俺には勿体な過ぎる…他の人が並んだ方がしっくりくる…なのに…
涙が止まらないんだ…
そのまま玄関ホールで蹲って膝を抱えて数時間…ゆっくりと扉が開かれた…
「竜胆」
あいつだ…酔っているようだ
「おかえり…飲んだの?大丈夫?」
あいつを支えながらリビングのソファーへ座らせ水を用意する。
水を一気に飲み干したあいつは俺をソファーに押し倒した
「なぁ。竜胆」
「何?」
「俺のこと好きなのか?」
「…」
何も答えられなかった…思い詰めたその顔は初めて見たからだ
「本当に…ごめん…俺間違ってた…もう一度チャンスをくれないか?もう二度と…お前を傷つけないから…」
そう言うとキスしてくれて優しく抱いてくれた…
本当に…変わってくれるのだろうか…
「えむくんは?」
「えむ?あいつとは切るから…お前は?藍玉とは」
「職場の上司と部下ってだけでなんでもないよ…」
「そうか…じゃあ…何故家に上げた?無理矢理か?」
あんたじゃないからそんなことするわけ無いだろ…そう思うけど何も答えられない。本当のことを言ったら店長だけでなく菖蒲まで何をされるかわかったもんじゃない…
「やっぱり…無理矢理か…殺しておくべきだったな…」
その言葉は負け犬の遠吠えにしか聞こえなくて俺は俯いて何も言えなかった。
「…」
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